ケミホタルの話(その6)

秋月から江川ダムを抜け小石原川に沿って車を走らせせると、日に日に風景が変わって行きます。梅が咲き桃に変わり桜から梨の白い花へと。

失業保険で生活する身で見る風景は確かに以前と違うのです。何もかもが生命の息吹に溢れて、いとおしくなります。失業者の心情を察するように川べりの石までが語りかけて来るようです。

又しても余談ですが「あの失業中が優しくていい男やった。会社が大きくなってからはカス男だねえ」とは老婆(ラオポ)の老公(ラオコン)評。

大体女性ってのは「尾羽打ち枯らした男」に案外惹かれるものらしく、しょぼくれているが優しい男が意外と綺麗どころにモテるらしい。多分老婆(ラオポ)の品定めもそんなもんだろう。

ある時小石原川に2トントラックがホイストを延ばして石を取っているのを目にしました。石を観る目はありませんが黒曜石というのか黒光りして楕円形で小さな斑点のある1トンほどの岩が釣り上げられています。思わず庭師姿の親父に「いい石だな。分けてくれるのか」と声を掛けたら「いいよ。二日市か。植木も付けて明日運んでやろう」となりました。

翌日驚いたのは中洲タエです。田主丸からやって来た親子の庭師は泣きべそをかかんばかりのタエを見て事態を察知します。庭石3個と植木5本ほど都合50万円のところ同情して30万円をタエから受け取りました。

それで士郎「会社を立ち上げたらその庭園は全てあんたんところの田野中造園に任せるからな」と言いますと「奥さんも大変ですねえ」と抜かしてトラックを走らせて行きました。それから7年後のことです。古賀町の新本社の庭園を200万円で発注して借りを返したのです。

この田野中家とはその後も奇縁が続きます。中洲は人見知りする癖に他所のうちに案外厚かましく入り込めるのです。小石原の窯元梶山やまいち窯もそうでした。そして御縁が長く続きます。田野中家には3歳くらいの可愛い女の子がいて爺さんが孫と植木を同じ目で愛おしんでいるようでした。ここの婆さんは何時も優しい笑顔でお茶を出してくれます。筑後川沿をドライブしては一服にあずかるお家になりました。

一番驚いたのは、あの時の可愛いケイコちゃんが偶然も偶然ルミカの今の企画部長のお嫁になったのです。それに腕の高いデザイナーで漫画も良くしており「漫画ケミホタル」も相当彼女の手が入っているのです。

庭のあの時の松は枯れました。ヒマラヤシーダはタエに切り倒されましたが山茶花の獅子がしらと金モクセイが美岩と一緒に残っております。

素寒貧が買った石と山茶花

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