ケミホタルの話(その19)

その数日後9月のある日、山部興産という栗本が懇意にする博多駅南の会社から中洲士郎呼び出しを受けます。少しいかがわしい筋の会社でしょう。会議室に通されました。こちらは士郎一人相手は7、8名と大島です。

慇懃な挨拶から一転「お前何か謀反を企んでいるらしいな」「一体何のことだ」「シラばくれるな。新しい発光体を開発したそうじゃないか」

大島に目をやると済まなさそうな顔をしている。

「大島が見たと言ってるぞ」「あれか。あれは冗談冗談。大島をからかっただけだ。なあ大島」「お前は粟本が言うように山師だな。覚えておけよ」

長居は無用とばかり山部興産のビルを出ます。大島も一緒に出ました。

「他言するなと言っただろう。これで計画はおじゃんだ。栗本を救うのが難しくなった」と大島に告げると大島はうなだれています。

(ヤッパリ秘密を漏らしたな。小商人の大島の奴、自分の商権が危うくなりそうだからこう動いてしまった)本来の作戦では打倒栗本ではなかった筈だが事態は決別に向かおうとしています。

その足で遠賀のアパート工場に戻ると土海と藤本も居ました。

経緯を話したが二人からは何も反応が有りません。それからもずっとそうでした。経営上に問題が起こると二人はどんな局面でもまるで反応しないのです。暗黙の了解と解すしかありません。

その日は念のために新たに開発した機械類は藤本の家に移しておきました。     程なくして栗本が血相変えてやって来ます。

「どうしたのだ?」

「今、折尾警察署に行ってきた。会社役員が装置類を盗んだので被害届を出したいと相談した」「それでどうだった?」「もう少し冷静に対処せよと諭された」

2軒目のアパート(通称第2工場)のブルーシートを敷いていない部屋の畳に座って栗本と士郎二人で話し合います。

「じゃあ俺は会社を去ろう。税理士もあんたに言ったようにルミナスプロジェクトの経費30万円は設立準備金として経費処理する。そのうちの15万円は株式購入代金としてあんたに払わせて貰いたい」

栗本は士郎の提案を拒絶します。

(会社は初年度僅かの売り上げで大幅赤字が確実。それに大島商会とは面倒な問題を抱えている。中洲士郎がいなければどうにもならないと考えたのでしょう) 

改めて役員会を持つことで話し合いは終わりました。

話の途中で、身を引くと言ったものの、俺には土海の技術がないのだ。あんな電気回路なんか組めやしない。土海と藤本がいなけりゃどうなるだろう。そんな心配が頭をかすめました。

 

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