余話(その1)

2006年若子の「赤ひょうたん」が閉じられて3年経っております。

前の年に福岡県西方沖地震があって士郎は「赤ひょうたん」改修と若子が残した銀行借り入れ返済に追われておりました。

そんなある日のこと白馬のママと出会ったのです。その男がいい男かどうかは連れの女を見れば解るものです。

逆にいい女かどうかも連れの男で解ります。

近頃の水商売の女性にあっては「白馬のママ」は際立っていい女でした。物静かで結った髷から推し量ると見事な黒髪が腰まで届いていたでしょう。

色白で小振りで何時も品のいい着物を着こなしていました

そのママが別人のように憔悴しております。中洲士郎に「正一さんが死にんしゃった」と一言。目に涙を溜めております。

その後ママは中洲から姿を消したようです。

あの白馬のママを引きつけた深田正一はきっと心優しい、いい男だったに違いありません。

有田のF社で研究所長に栄達していた栗本も深田の他界に合わせて会社を辞めたとの噂がありました。13代深田正一も気鋭の研究員栗本も伝統の焼物稼業にあっては異才は不要とばかりに忘れ去られているようです。

深田正一は別会社でファインセラミックスを立ち上げるとか栗本はF社を辞めて日本化学発光に馳せるとか共に温室を飛び出す勇気があれば苦しいが面白い人生が開けたでしょうに。

悔いを残さないために勇気が必要だし妖精の声に従ってイバラの方の道を選べば奇跡が起こるのです。

(なーに中洲士郎には捨てるものが何もなかっただけじゃないか)とは妖精の声。確かに。

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