チェリービールの話(その12)

市場調査のお話です。

長い大連出張からやっと日本に戻りました。会社というのは業績悪くて必死の時に気付かないのが「社内の厭世ムード」です。それが業績好調になると若い者は目的失調にでもなるのか鬱に囚われるようですね。

開発小屋でくつろぐ暇もなく管理本部長から「大変です!」と泣きつかれたのです。やれやれですね。しかし(これはいい口実になる)と思い直し「よ~しこんな時は飲みに行かなくっちゃ」とばかり問題のA君を連れて古賀からバスに乗って中洲に繰り出す事にしました。

中洲村も久しぶりです。バスを降りて日銀の裏手にある喫茶兼スタンドバーをふと思い出し、ちょっと顔を出す事に。そこのママは中洲若子の仲良しだったのでそのお礼で若子の死後時々飲みに行くようになりました。ほんの暫くのご無沙汰だと思っていました。今日の相棒のA君と静かに止まり木で冷えた生ビールで喉を潤して退散する心算が・・。「士郎さん、6年も来とらんよ。この子知らんやろう。もう5歳だ」ぽっちゃり丸顔のママが違う相手に本気で怒ってるようでした。抱いているのは可愛い娘でね。「あのう。僕の子じゃないよねえ」それで大爆笑。見知りの偉い先生(多分ママの追っかけ)も入ってきて店は大賑わいになりました。思えばズ~っと開発暮らしだったのです。

時間がないので傍の(管理部で頼りとする)A君を引っ張って隠れ居酒屋の「地球屋」と中洲村で一軒しか知らない「飲み屋N」を回って家にたどり着いたのは真夜中。長い出張でした。

翌朝「帰ってすぐに何処を飲み歩いとるんや」の老婆(ラオポ)に「開発や開発!」

実際綺麗な女性たちを前に中洲節で大騒ぎしてしまいました。年に一度も行かんのにそこも常連の振る舞いでねえ。(嫌ですねえ。静かに飲めばいいものを)しかし飲み屋で女性を喜ばせる極意はですねえ。大抵「実は今・・極秘のミッション中でね」と、懐から開発品を取り出して披露するのです。な~んだ思い出しました。いつも「ドラえもん」やってるわけです。

今回テーブルで披露するのは大連で誕生したばかりのルビー色に輝く「ルミコチェリーソース」(左手)とこれを使った極限のカクテル。この色をご覧あれ。「信じられない美味しさだわ!!」綺麗なホステスさんに気を良くしたが心配した通り帰りの勘定は高くてねえ。当分遊べません。

チェリービールの話(その11)

今日もセレンディピティ(予期せぬ幸運)です。

大連でのチェリーソースの開発も4日目で仲間たちに疲労感が出ております。その中で若いバンちゃんの甲斐甲斐しい動きは再放送中の「おしん」のようでした。

テーブルに並ぶサンプルの一つが中洲の目にとまりました。淡いピンクの液の表面が少し盛り上がっているのです。閃くものがあって少し傾けるとプリンとしております。ゲル化していたのです。

それは昨日張先生のチェリー農園で見つけた2本の名もないチェリーの搾汁でした。未だ脱水もしてないのにゲル化してます。金魚さんが「コラーゲンよ。日本女性の大好きな」って声を上げます。日本の消費者が愛でるコラーゲンは殆ど牛の骨から採った動物コラーゲンでしょう。これはもしかしたらチェリーから採った純粋の植物コラーゲン即ちチェリーセラミドかも知れません。実際バンちゃんと金魚さんの手の甲で薄っすらと光って皮膜をこさえています。

更にこのロータリーエバポレーターで2時間も脱水すれば天然のままで保存可能かも知れません。

「H子さんに捧ぐコラーゲンルミコ」なんて妄想を膨らませております。

1人の見目麗しい理系女が知り合いの会社に就職しました。研究職希望だったのに営業に廻され会社を辞めて大学の研究室に戻りました。そこで紹介された地元のVBを助けてリンゴ絞り滓からリンゴセラミド抽出の事業化に手を染めたのです。ベンチャー起業家の端くれ中洲はその事業に終始反対でした。物作りでは人と同じく原料の氏素性がしっかりしてないと大抵失敗するのです。ましてや絞り滓なんて養殖の餌に混ぜる位がオチです。結局3年間の艱難辛苦の挙句リンゴセラミドの事業化を諦め次に粉末冶金の研究室に入りました。その会社とは少しだけど縁があって(一応これが中洲の専攻でしたから)期待に違わず大きく輝いているのを知りました。惜しまれ泣かれて今春その下関の会社を寿退社したのです。だが果たせなかった夢、女性の肌を美しく輝かせるセラミド事業には依然思い入れが強いのです。

今回のチェリー化粧品開発は彼女に代わってのリベンジでもありました。動物には同じ品種ですら大きな個体差があるように植物でも品種によっては味と見かけが悪くても凄いパワーが秘められている。そんな事をワイン造りで耳にします。だったらチェリーで皆さんと一緒に隠れ品種を発掘してチェリーに新たな物語を仕込もうと言うわけです。

誰かさんの様な裏道交配と同じくチェリーにもハグレ交配での突然変異を期待するのです。大きくて美しく甘い新品種じゃなく農場主を裏切って見捨てられたチェリーです。それを偶々中洲チームが加工したら信じられない凄いパワーのコラーゲンルミコが生まれたという開発物語です。

化学物質ゼロだから皮膚に優しいのは間違いない。ウチの老婆(ラオポ)は化粧品アレルギーだから化粧代が掛かりません。このコラーゲンルミコは老婆(ラオポ)にうってつけかも知れんので帰国したら彼女にタダで実験を頼もうと思います。

チェリービールの話(その10)

チンユイ社長に頼んで大連ルミカにロータリーエバポレーターを設置して貰いました。これで思う存分実験ができます。空気漏れでヤマテ君は手直しで大変でしたが昨日から大活躍、何しろ安い、日本製の5分の一です。

昨日まででチェリーに残留農薬の心配はなくなりました。市場に出されるメジャーのチェリー・紅灯(ホントン)は色見でアウトです。だから自分たちでチェリーを探す他ありません。

それで今日は生い茂るチェリー農園に入って食べ歩きを楽しむ事にしたのです。この時期は大抵が紅灯(ホントン)という甘くて大きくて色見が濃いい市場で一番人気の品種です。加工するには色が濃いすぎるからアウトにしました。しかし70%くらいの成熟度なら一応テストする事にして仲間5人に収穫を頼み中洲一人園内をうろつく事にしたのです。

完熟前の紅灯。流石にチェリーの女王です。

しかしヤッパリあのチェリーが気になったのです。それは小粒で大層な鈴なりで赤見が強い厚い皮、しかも直ぐには外れないほどヘタが強いのです。要するに生命力がメチャ凄い品種、但し味は酸っぱいだけでした。見捨てられておりました。

日本の佐藤錦から何代も交配を重ねたのでしょう。小さくて食べる人などいやしない。見事な房なりだが朽ちるだけの定め。その内邪魔だと切り倒される運命です。張先生に名前を伺っても邪険に「知らん、名前などない」じゃあ皆んなで名前を付けることに。即衆議一決、品種名は「ルミコ」となりました。

チェリービールの話(その9)

残留農薬バスターの登場です。

皆さま大連政府とチェリービール開発の約束を果たすために6月3日から大連に来ております。いよいよ今年も旅順半島はチェリーが朱色に染まりはじめ半島の北側道路ペイルー(北路)の道沿いはチェリー売店(売人)が軒を連ねてました。

実は6月26日から3日間北京で大規模な防災展が開催され今回初めて海外展示会でアイパオを出展するのです。その為に相棒のオーノやイワモトが準備で悲鳴を上げている最中でのチェリー騒動。大連工場は正に混沌の極みです。辻褄合わせで後から理由をこじつけるのは中洲の常套手段でしたが今回はちと苦しくて。それで開発の日取りを中国の3連休6月7日から9日に置いてなるべく社内の目に触れないようにしました。

ところが6月6日大阪からシャープなイケダとキュートなバンちゃんのチェリービール開発チームが中洲の応援にやって来るのでさあ大変。チェリーの先輩としてしっかり実験計画を組んで置かなくっちゃいけません。

そこでチェックポイント

★先ず安全なチェリーの確保。

★残留農薬のチェック

★加工向け最適品種の探索

★加工技術の確立

★レシピの決定

★日本に持ち帰ってビール製品化の研究

★大連政府との間で品評会の開催

素性の知れないチェリーを市場で買うのは心配だから哲人張先生のところの由緒正しいチェリーを使用することに決めておりました。一部の日本のブランド加工食品にならって使用した原料の生産者を明示するのです。

それで残留農薬の有無を調べます。方法はこんな仕組みです。化学発光が反応物質(CPPO)と酸化剤(H2O2)これに触媒が反応はを促進して化学発光を生じると前にも述べました。じゃあ触媒を入れずに更に反応を抑制する物質を入れておいて残留農薬や洗剤に吹き付けると化学発光を起こすのです。中洲がこれを残留洗剤チェッカーと称して売り出したけど今まで売上ゼロですね。判定が絶対信用できるかと問われれば「ノー」です。しかし自分で使う分は構わないでしょう。

中国のこの時期手土産と言えばみんな2kg箱入りのチェリーです。そして業者は色と甘味を激しく競っています。不用意な言動は物議をかもすので慎まなきゃいけませんが6月4日土産に貰ったチェリーで発光テストしたらヤッパリ光りました。食べる気がしなくなります。言っときますが日本の市場で求める果物も大抵光るのです。果物や野菜を洗わずに皮ごと食するのは控えられた方が安全です。

そこで張先生と社員を前に同じテストする事にしました。流石に先生はじめ皆さん不安気です。だが見事に発光しません(予想していた通りでしたが良かった!)ついでに張先生農園で収穫したばかりのイチゴをテストしたら発光してしまいました。

農薬は散布していないが甘味を増すために特別の有機肥料を使用しておりそれに問題があるのかもしれません。張先生も農薬バスター・世紀の大発明(?)にひどく感心していますが今回は使用するチェリーの安全性確認が目的です。だからこれ以上の探求は控える事にしました。

収穫された紅灯の熟成品を使って工場で所定のレシピでジャムにしました。色が濃すぎてアウトです。そこでチェリー最適品種探しに次の行動の照準を合わせました。

チェリービールの話(その8)

ヒハラ君がイカサマやってくれました。

中洲が口のイカサマ師ならヒハラはパソコンのイカサマ師です。この前作った平面の写真を立体に加工してるんですね。

中国でこの写真一枚でクラウドファンディングやってみたらどうでしょう。1億円限定で募集して成果配分やれば面白そうです。

チェリービールだけじゃなく張先生と組んで納豆菌プラスチェリー健康飲料、チェリー石鹸、チェリーパック、勿論チェリーワインやブランディも。チェリーソーススプレーもやってみたいですね。先ずヒハラ君にイカサマ写真こさえて貰ってそれから反応良ければ試作する事に。

アイパオの開発(その34)

 

グランパオよりも一回り小さくて「手頃な価格」そうですね10万円を切るなら買ってもいい。そんな声を意識してキャンピングパオ即ちキャンパオの開発に着手しました。

10㎡のグランパオでは12面体の壁の幅が90cmだからこれを60cmに縮めると手頃な4.4㎡。これに決定。 問題はPVCチャンネルを共用するので屋根の継手の角度が微妙に変わる。しかし面倒だから継手も共用したいもの。イワモトが一晩図面を睨んでフレームを組み上げました。

問題は床でした。以前由布農園で12面体アイパオの前身の6面体パオ開発に凝っていた時室内のテーブルも6角形にしました。この時菱形三個を組み合わせるととてもスマートであることに気づき12角形のグランパオの床に6角形の床が張れないものかと思案しておりましたらオーノの奴、問答無用とばかりに部屋の中心から6本のPVCチャンネルを放射させて三角形のパネルで固めてしまったのです。

こんな具合にね

12角形の面に6角形の床をはめ込めば6個の隙間が出来て処理が面倒です。キャンパオではオーノの邪魔が入らないうちに12角形の床に菱形3個の6角形の床張りに挑戦。何とかオーノの鼻をあかしてやりたいものです。

閃めきました。先に6角形の床を作りその上に12面体のキャンパオを乗せるというアイデアです。それで半日、床板を平行四辺形に定寸加工して菱形に埋めてみました。組み上がった27mm厚の菱形床板を踏むとたわみが出ます。33mmだけ地面から浮かせているのでやむを得ません。面倒だけど床下に更に床板を受けるタルキを置く必要があります。

そうだ床を二重構造にするのです。3個の菱形からなる一段目のPVCフレームのレベルを出して2枚の床板を都合6枚組んでその上に2段目の床を乗せて床板が下の受け板とクロスさせて張るのです。いい考えでしょう。

「そんなのあったり前じゃないか。誰だって思いつく事よ」中洲ならそう言いますねえ。実はこれからある発想と結び付くのです。

2段構造の床板に20cm厚の発泡スチロールを組み込むと耐荷重2000kgでアイパオが水上に浮くのです。ソーラーパネルで発電し小さな電動スクリューで移動させます。貧しい水上生活者の出来れば若い娘がトランプさんの様なお金持ちの客と一緒に魚を採って旨い料理を振る舞えば良い稼ぎになる筈です。勿論Bi見逃サーズで美しい水底を見ながらね。

次は水上アイパオに挑戦しなきゃ。

チェリービールの話(その7)

皆様には長々とチェリーの話にお付き合い頂いております。退屈されるか馬鹿馬鹿しくって中洲ブログを退出される方には本当に申し訳ないです。

しかし後世のためにそのジャムがどうしてビールの話になったのかを書き残しとかなくっちゃ。

4月23日の事です。大連から市長はじめ要人の来日があり旅順口区のトップを夕食にご招待しました。皆さま恰幅良くマナーも素晴らしい方達ばかりです。

東京支店からヒハラ君とファン君も参加してくれました。

世の中本当に男前でにこやかに相手の顔を見て話に相槌を打って女性にモテる男性がいます。旅順口区の冷区長はそんな方です。容貌に自信がない中洲はひたすら話題で相手を引き込もうと努めます。そして「又喋りすぎた」と自責の念に囚われるのです。

今回もそのお喋りがとんでもない事態を招いたのです。

「ルミカが旅順に進出して20年。(皆さまルミカが旅順で一番古い海外企業だと知ってビックリ)  旅順の大変貌を見ながら共に発展してきました。2004年に旅順のチェリーに出会いその加工を提案、自らジャム作りに取り組み去年からはチェリーワインやチェリービールにもチャレンジしている」とホラ吹いたのがいけなかった。ルミカがケミホタルの会社だと伝えていなかったのです。

今回の大連市要人の来日はそのチェリー加工事業の為の調査だったのを知ったのは話の後でした。奈良の有名な酒造会社訪問も予定されて他にチェリー薬品やチェリー化粧品開発調査も含まれていました。勢いに任せてチェリー化粧品ならルミカの元化学者K嬢がりんごセラミド抽出の研究もやってるなんて喋っちゃいました。そしたら「ルミカさん是非是非大連市のチェリー事業に協力願います」って事になったのです。

さあ大変です。直ぐに電話して

チェリービールについてはT薬品に執行役員として招請されたA氏に、痛風に特効あると言うチェリー薬はT薬品社長に、そして化粧品は青森の元社員に助けを求める事になりました。

6月に入れば旅順半島はチェリーの紅色に染まります。この6月中にチェリー加工品に用いる色鮮やかなチェリーソースを確保しておかないと来年の事業化に間に合わないのです。

5月22日博識のイケダ君の手引きでA執行役員と大阪のとあるクラフトビール装置会社を訪問しました。ここでも人との有り難いご縁があって早速旅順チェリービールの試作が決定しました。

6月中に旅順チェリービールを作って大連市長始め皆さんに試飲してもらわなきゃ。

5月24日役員会に来ていた東京支店のヒハラ君にチェリービールの顛末話したら「ふむふむ」と言いながら2~3分で下のイカサマ写真を描いて見せてくれました。

新商品なんていとも簡単に生まれそうですね。

しかし実際誰がそのチェリービールの製造を手がけるのでしょう。ルミカは門外漢、それに今はアイパオとアイロッドなんかの新事業で忙しくチェリーなんかに構っておれないのです。

そこで5月17日旅順の哲人張先生を訪ねて「先生いい話ですよ。チェリービール作って下さい。全面協力します」と。そしたら「お前がやれ。何でも協力する」と返され窮地に入っております。兎に角「旅順桜桃啤酒」のサンプルだけこさえましょう。乗りかかった船ですから。

チェリービールの話(その6)

[失敗は成功の母]

ジャムの失敗作の活用にも知恵を絞りました。色が悪い、ペクチンが不足してるなどで破棄するのが沢山出ます。何か活用法はないか思案しました。

由布院農場では生ゴミ発酵に取り組んでおります。その中に色の綺麗な菌体の塊を見つけジャムで培養してみました。春になって近所の農家からヌカを大量にタダで分けてもらいこれに菌体とジャムを水で溶いてヌカにまぶして土囊袋に10kg程詰めて布団に包んで培養するのです。2週間もすると白い菌体の中にジャムを食べて赤くなった菌体の硬い塊が出来ました。これをLMC34菌と銘打って農園や老婆(ラオポ)の庭で使用しています。多分錯覚でしょうが「いい菌だ。分けてくれ」という御仁も現れて配布しております。

湯布院の食堂で発生した生ゴミと発酵槽

出来上がった菌体(主に乳酸菌)

2015年大村智先生がノーベル医学生理学賞受賞されたのは寄生虫によって起こる感染症の治療に有効な菌体の発見でした。バクテリアには無限の可能性があると仰ってます。ジャムのような甘い色の付いた食べ物で菌を培養して色で菌種を選別したりペクチンやセラミドを効果的に抽出するのはどうでしょう。

[農薬バスターの誕生]

結局毎年500~1000瓶の150g入りジャムを知人に配布しました。大変好評でしたが原料のサクランボが中国旅順産と言うのは憚られるのです。中国産の食材は聞こえがよくありません。矢張り中国で作って中国の人に食べて貰うしか策がないのか?それに飢えた農民が欲に任せて農薬やホルモン剤を無闇に使用していたらと思うと心配で最近数年は新たなジャムの仕込みを差し控えております。

そんな中でサクランボに農薬が付着しているかどうか簡単に検出できる方法を見つけました。残留農薬と反応して化学発光させて目視検査するのです。これを農薬バスター発光スプレーでやれば悪質なサクランボを除外できるでしょう。いよいよチェリービールの開発が6月に始まるのでこっそりと残留農薬を検出してみましょう。

グラスの温水洗浄が充分でないと残留農薬や残留洗剤で化学発光が起こって目視できます。

中国産を皆さんひどく毛嫌いしますがこの方法で検査すると私たち日本での身の回りでも残留農薬や残留洗剤が溢れています。例えば熱いうどんの汁をドンブリから喉にかきこむ度に湯に溶けた有害な洗剤(界面活性剤)が胃袋に蓄積されるのです。大手の洗剤メーカー2社に掛け合いましたが相手にされません。ただ一社サラヤのヤシの実洗剤だけが良心的でした。むしろ中国の行政と組んで残留農薬バスター運動やるのがいいかも知れません。そうしたら世界で安心できるのは中国の農産物だけだってことになるでしょう。

[調理法の研究]

いよいよチェリービール開発に突入します。もうすぐ旅順のチェリーで作ったビールを大連市長や書記に試飲して貰う事になります。6月に入ったら旅順に飛んで鮮やかなチェリーソースを開発します。それを無色に近いビールに添加する手筈が整いました。

そんな折「食品エアゾール開発」の話を聞かされたのです。極限の色、香り、味のチェリーソースをスプレーから単独あるいは別の材料と合わせて料理に噴射するのです。真っ白い皿に焦げ目のついた黒豚ステーキ。これが鮮やかなピンクのチェリーソースで彩られます。

皆さま。話が長くなって 申し訳ないです。ここで知って欲しかったのはルミカの開発手法は金と技術と時間が掛からない小物ばかりです。勿論男の夢工場を庭の隅かベランダに建てて1人で開発出来る程度のテーマです。

それではチェリービール本題に入ります。

チェリービールの話(その5)

調理器の事も書き残さなきゃあ。「鉄製はいかんよ。銅製が良いけど値が高いし熱の伝わりが早すぎるのでまあステンレスにしとけ。お玉杓子は木製がいいやろ」老婆(ラオポ)は威張っとります。しかしこの人の教えに従う他ない。

「それよりホーロー鍋ならどうだろう」中国の地方の市場には未だホーロー製品が安く出回っております。ホーロー製品の洗面器でしたら200円くらいで深鍋よりもずっと加熱撹拌が容易でした。サクランボを煮るのに洗面器使っているとは老婆(ラオポ)に話していません。

皆さま。どんな屁理屈つけたところでチェリージャムなんかをルミカと言う会社の事業に組み込むのはナンセンス。ところがこれが大連市から旅順特産品にしてくれとの要請。更に旅順名物チェリービールを誕生させるならそれは立派な社会貢献ですよね。隠れてゴソゴソやってたのが突然桧舞台に出ようとしてます。

仮にとんだ愚行だったとしてもこの作業から予期せぬ収穫、そうセレンディピティ(ついでのお駄賃)が出そうなのです。皆さま「嘘だろう!」って?まあ聞いてください。

[男の夢工場誕生]

さあ真空脱水装置エバポレーターを手に入れましたがこの装置の置き場と作業場所確保が大変でした。実験室の隅っこ、中洲若子が店を閉じた「赤ひょうたん」、島興こしとやらで取り組んだ「宗像大島」の施設をさまよい最後は本社駐車場にアイパオを建てて中洲ジャム工場を布告しました。

欧米の大抵の家庭では男の仕事場としてのガレージが有って工作機械も揃え男達は自分の威を保っています。しかし日本の男はと言えば狭い家に書斎も仕事場も無く無気力な邪魔者に身を堕落させているのです。中洲士郎もその一人でした。「妻子の為に男よ立ち上がれ!」そこに一攫千金を夢見る亭主の隠れ家「男の夢工場」アイパオが登場したのです。

初代アイパオはスチールチャンネルにビニールシート。

2代目はPVC異形パイプにPC(ポリカーボ]外装

[チェリーキャッチャーの発想]

果物の収穫はどれもこれも手作業と決まっています。枝の剪定も大変な作業です。旅順ではチェリー栽培で貧しい農民の多くが職に有り付きました。しかし4m以上の高い枝からの収穫は難儀で危険です。人手不足も加わり果樹の高所は未収穫チェリーだらけ。何かいい道具を開発しなきゃ。

5年ほど前青森のSさんの依頼で雪庇落としを開発しました。BiRod7500です。これを進化させたBiRodセットでは高所撮影や瓦礫の中、水中撮影もできるので人気商品に育ちました。次にBi見逃サーズとなるとこのBiRodの先にカメラと熊手と収納籠が付き手元のタブレットの映像を観ながらキャッチャーを操作してチェリーを収穫するものです。

チェリービールの話(その4)

2005年から旅順の素敵な6月になると100kg程のチェリーを買って女子工員たちとジャムを作るのが年中行事になりました。老婆(ラオポ)いないし娘たちとそりゃ楽しい作業です。この仕事、失敗だと発色が悪いので勝負が早い。それには先ずチェリー選びです。沙蜜豆(シャミトウ)という新品種それも裏なりの小粒なチェリーが凄いホットピンクで味も抜群だと分かりました。

こんなチェリーだったら間違いありません。

老婆(ラオポ)から色落ちを防ぐには「火を止めてからレモンを絞って入れよ」と。しかし一個でもレモンの種がジャムに紛れ込んだらアウトだと脅されてポッカレモン100を採用。そしてNHKのガッテン番組で紹介されたレモンを冷凍して皮を擦って粉にして仕上げに入れるという隠し技を拝借しました。

次は加熱です。そもそもジャムは大量の砂糖それもグラニュー糖で煮込んで水分を飛ばすわけで組織も色も壊れて仕方がないのが常識です。

じゃあ沸騰を極力抑えて水分を飛ばすには真空低温調理しかない。そこで研究室のヤマテをそそのかして高価なエバポレーターを調達させてジャム作りに流用しました。この時からです。中洲語(乞食と社長は3日やったら辞められん)が飛び出すのは。

写真はそのエバポレーター。温浴はせいぜい60℃で先ずジャムの中の空気が大量の泡となって出ます。この時突沸に注意。次に水蒸気が冷却器に触れて水滴が溜まって行きます。この過程でレモンが上手い具合に悪い空気に置換されて長期間色落ちを防ぐのじゃないでしょうか。

同時に究極のジャム開発の必要に迫られて誰の造語か「乱心殿の変な開発」の数々に矛先が向いて行くのです。そして知恵を絞るのは何時も4畳半の本が降ってきそうなベッドの中。

旅順の工場で半加工したジャムの保管と輸送が問題に。試行錯誤の末、密封加熱殺菌と冷凍保管を考慮して食品用ナイロンラミネートのアルミフォイル採用して致命的問題が解け挑戦が継続できました。

余談ですがこの袋は鮮度を保つのに抜群で「お魚パック」として後に商品化。キヨタカにお魚百科からパクらせたデザインが気に入ってます。少し売れてるけどイオンの魚売り場にでも営業が売り込めばいいのにねえ。

さて次は日本でのジャム工場確保。そりゃ新事業挑戦は分かるが何も食品でそれもジャムなんかね〜。もしも役員のひとりが「社長どうぞどうぞ」とやったらそいつは大変なゴマすりで会社を潰すだろう。中洲が勝手にこさえて皆んなの目に少し触れるが黙殺出来るくらいがいい。そこで・・・。