シュシュシュッ

7/6(火)合宿2日目。開発が佳境に入る。

遠賀(おんが)の世間知らずの開発マン達に
ビジネスの激戦地東京の企画、営業マンが加わって
朝からワイワイ試作をやってる。

造作もない問題に右往左往する連中を尻目に
開発センスでは社内随一のヒハラ氏と光るボールに取り組む。
以前記したが、光るUFOボールで一世風靡した中洲も
光るサッカーボールとゴルフボールで苦杯を喫して以来
ボール開発は鬼門となっている。
何しろLEDの威力に勝てないのだ。

だがアリヨシチームの今回の発光ペイントの発光ゲルで
ボールの内壁を光らせば面白いことになる。
輝きが違うはずだ。
いくら口を酸っぱくしても連中は動こうとしない。
本当に開発マインドが欠落している。

ヒハラ氏が見つけたPVCボールでやってみると
見事にボールが輝くじゃないか。
PVCだって選べば問題ない。
次にこの光るボールを手に支店内を歩き回る。
デザインに没頭中の若いスタッフ達に見せながら芋づるネタ探しだ。
先ず光るコスチュームにチャレンジ中の大好きなお針子娘を捕まえた。
コスチュームにLEDを仕込んでレースを光らせていた。
LEDの代わりに
PVCの光るパンティを穿かせるのを提案したが
却下された。

「タケウチ君、ところでいつかテーマパーク向けに
パンチを出せば奇声を発するグラブ作ってたけど、あれあるかな」
お針子さん沢山のサンプル箱から取り出してくれた。
「このグローブ光らせたら面白くないかな」
これを手にして奇声とパンチを繰り出しながら注意を引こうとしたが
誰も乗って来ない。

そこで何事にもシャープなイシバシ君を捕まえて
「光るグローブ、ダメかな」
「・・・面白くない。格闘TVゲームで・・
そうだスポーツセンシングの光センサーに使えば」
「そうか。TV画面に向かってシュッシュッとパンチを繰り出せば
そのグローブの光のスピードをセンサーが感知して
敵が避けたり倒れたり・・・」
拡張現実の世界が出現する。

シュシュシュッと

急いで電子回路サワダ氏に電話。
子細を伝えると
「分かった。3つほどプログラムが浮かんだ。直ぐに着手する」

考えてみりゃ中洲は何もやっていない。
だが誰かが大ヒットを産ませるように
中洲をあやつっているんじゃないかな。
この新製品の企画が成功すれば第一の功労者はイシバシだ。


左は光るオッパイになるかな。

中洲式発明理論

2/5(月)昨夜11時にイシバシ君とアパホテル潮見に投宿して即バタン。
さすがに朝は身体が重い。
フロントで顔を合わせた遠賀工場からの4名は皆不機嫌だ。

「大阪のフィッシングショーで大偉業を成し遂げて今度は開発合宿だ」
との呼びかけで新木場の東京支店にくり込む。
「スポーツの世界ならこんなのは疲れのウチに入らん。
この2日間で怠けた2年間を取り返し
何が何でもギフトショーでまともな製品を発表しろ」
「爺さんどうしてこんなに元気なんだろう。
社内の多数がインフルにヤラレているのに風邪にまで逃げられとる」
との陰口も。

「良いな。新製品で2億円の粗利を上げて
の1億円を社内に分配して社員平均年俸を100万円増やすのだ。
それがお前達の仕事だ。毎週ステーキが食えるぞ」
中洲の檄に乗る気配もなく
開発合宿が開始された。

「中洲っさん。どうでしょう?」何度かの問いにことごとく
そんなモン、お客に見せれるか」と却下する中、
彼らの騒々しい仕事場を離れて
デキるヒハラ氏を会議室に呼んだ。
「どう?例の子宮検診器の仕込み具合どうだろう?」
大きな期待を胸に尋ねた。
「未だお見せできるモノじゃないんだが」と取り出したのは・・・。
太くてとても使える代物じゃない。
32mmの球状カメラを棒状のプラスチックでカバーして
それをゴムで覆って空気が入るわけだから。バカバカしい。

「牛の胎児の検診にしか使えませんな」と
いささかヒハラ氏の開発センスをけなす物言いをしてしまった。

すると、「実は〜」とヒハラ氏。

テーブルの上にゾロゾロとネットで検索して手に入れた商品を並べる。
尿道に挿入してシリコンのカテーテルを見事に膨らませて
排尿させる器具。それにアダルト製品の数々。
その中に何と
左程太くない透明の棒に
高性能CCDカメラとWiFi発信機が仕込まれ
離れた場所のスマホに膣内が映し出されるグッズが
既に売られていたのだ。
LED照明とオマケにバイブレーターまで付いている。
勿論360°2K画像、
USB送信など中洲の設計には劣るが
恐らく中国深圳で作られた製品の出来栄えは見事。
しかも数千円だ。

やはり中洲士郎の開発論は正しかった。

自分が発案したと思い込んでも
同じ時に少なくとも200人は同じアイデアを持って
何人かが既に形にしている。

形になった物は
1週間で同じないしそれ以上の品物となって市場に出現する。

世界中の成人女性の福音、
子宮検診器の開発はこうして挫折した。


SHIRO’S BARでの開発風景