アイパオの話(その11)

大震災の支援活動に行くのに「出陣式」はありませんよね。4月14日からは太助庄助士郎の3人は上半身裸で新たに取得した北茨城の工場敷地に秀吉の一夜城に倣っての築城です。

中洲士郎生まれてこの方大概バカをやって来ましたが本件は勝算ゼロ、人生最悪の愚行です。トイレ小屋から始まり風呂小屋、住まい、道具小屋を懸命に建て続けました。

この工場の気の毒な社員たちは以前の雇われ社長のゴルフ三昧で会社を潰され今度の中洲社長は「ご乱心」の様子。皆さん会社の行く末を案じとります。

兎に角異様なビニール小屋を乱立させました。何事もそうやって道が拓けるのだと自分に言い聞かせながら。

由布農園の経験で「トイレは落とし込みに限る」と信じておりました。ところが原発事故同様想定外が起こるのですねえ。ベビーユンボで穴を掘ってパナソニックの様式便器を設えて悦に入って翌朝ビックリ。穴は地下水であふれております。これじゃウンチも出来ません。

写真のようにとっさにドラム缶の上にトイレを作り外からドラム缶を取り出す方式に変えて事なきを得ましたが。何事に付け思い込みの強い性癖が加齢とともに強くなって社内の随所に問題を引き起こしていたのです。この所はブログを書きながら懺悔しましょう。

高萩市の偉いさん方の視察見学がありました。中洲勇躍。アイパオの良さを弁舌爽やかに説明しますが反応は期待外れでした。段々「中洲流遊説術」に自信が無くなってまいります。要は「早いでしょう。安いでしょう。明るく快適でしょう。被災者が自ら建てるのです」それが評価は「安っぽい、被災者を充分に満足させる造りじゃない」です。価値観の違いですね。今度はテレビ朝日の朝の人気報道番組がアイパオを取り上げることに。

あんまり人が驚かないモノを「ねえ凄いでしょう」と言うのも白けるので出演を断りました。代わりにルミカの常務に就いた例のゴルフで会社を潰した社長に代役を頼みました。

テレビをチラリと見たら小屋の宣伝じゃなくて以前の自分の会社の主力商品である「トイレ消臭剤」を宣伝してます。だって彼は全くアイパオなんかに興味がないのです。やれやれ「一夜城作戦」はそうやって失敗に終わったのです。

ところが東北の各地からタダなら建てて欲しいとの依頼が7件ほど舞い込み駆り出されることになりました。猛暑にも突入して難航苦行が秋まで続きます。一方で会社の本体は経営の芯を失い迷走を始めていたのです。